WEBオープンハウス
滝頭の家
OUTSIDE
築80年の民家を再生させたプロジェクトです。屋根や外壁を全て取り払い、全面的に改修しました。何度か増築を繰り返してきた結果、いくつも屋根がかけられていましたが、この際にということもあって一つの屋根にのせかえました。それまでの印象からするとかなり大きく見えるようになりましたが、床面積的には従前のものとととんど変わりがありません。屋根というたった一つの要素でもかなり印象が違ってくるものです。
玄関のあるこの面は西を向いています。日が暮れるかかると軒の出の影が大きくかかってきます。和風の家で大切な陰影感が垣間見える瞬間です。玄関の引き戸はアルミサッシではなく木製戸とし、具体的には桧を利用しました。密な格子と腰板というデザインにしていますが、いい雰囲気をかもし出しています。また玄関ポーチのタイルは敷瓦を用いていますが、落ち着きのある風合いに仕上がりました。
増築で新しく作ったリビングと一体になった濡れ縁の詳細です。道路沿いからの視線をさえぎるための格子壁を設けています。西日の遮蔽にも役立っています。材としてはここでも桧を利用しています。
出桁の詳細を見た構図です。改修前から既にあった出桁。過去の思い出と一体になって今後もこの家を支え続けます。縁側の柱は再利用しました。経年変化でえた風合いを保ちながらさらに寿命を延ばしました。
濡れ縁の詳細です。深い軒がかかっているのでちょっとした雨降りでもここにでて何かしら用事が出来ます。
INSIDE
玄関の詳細です。天井は杉の竿縁天井、壁はシックイ塗り、やや薄暗い空間に見えますが光の量をセーブして撮影しています。天井から少しはみ出て見えるのは従前からある梁。日本の古い家屋は比較的軒高が低く作られていて、この建物も例外ではありませんでした。あえてここではアラワシとし、新旧を混在させながら見せることにしています。
玄関ホールを少し斜めから見た構図です。中央に見えるのはリビングへの入口ですが、細身の格子で分割されたデザインにしています。壁との兼ね合いを考えて仕上材の色は白としました。新しく張りなおした床材は杉を利用しています。30mmの厚板としました。柱や梁は古色となっていますが、床に関しては生地の色のまま仕上ました。年月がたてばこれも風格のある色に変化していくと思っています。
玄関ホールから和室を見通した構図です。畳は壁や新しくやり代えましたが、既存の建具は出来るだけ再利用しています。おかげで板戸が渋い色を放っています。すぐにはなかなか出せない色合いです。歴史というのはそれだけ重みがあるということだと思います。
以前の民家はいわゆる田の字形の典型的な間取り。今回もそれを保ちました。今でも人が集まる場としてよく使われています。地域のコミュニティが絶えずに残っている証拠です。現在の時代においてはすごく喜ばしいことです。それから田の字形の間取りなので障子が連続する空間になっています。これこそが日本の伝統の象徴のようなもので、障子からもれる柔らかい光が心を穏やかにしてくれます。
実はこの家には床の間といえる場所がありませんでした。今回の工事でそれを新しく設けました。差し鴨居がかかる床の間は普段のものと違って力強い印象を与えてくれます。シックイの白さと木部の色合いの対比も空間にインパクトを与えています。
新しく設けたリビングの全景です。杉のフローリングの中に畳の間を切り込みました。そして掘りごたつもそなえています。天井には昔の力天井を思わせるデザインを施しています。木が与える素朴さや風合いは日本人にとっては欠かせないものかもしれません。
リビングの全景その2。奥側の天井が一段低くなっていますが、もともと軒が低かった場所だったので、あえてこういったデザインで収めています。タレ壁にあたる部分には杉の格子を密に配置し、日本人に馴染むデザインとしています。
今回は対面キッチンとはせず壁付けとしました。しかし施主様のご要望もあり従来のキッチンでは対応が出来ず、思い切ってオーダーキッチンとしました。下部の収納が引き戸式になっています。長さも3000mmとかなりロングなキッチンに。色合いもダークなものとし、空間とのバランスに配慮しました。横に添えたレンジ台を合わせるともっとロングサイズになりますが、そういったさまざまな要望に的確に応え解答を見つけることが建築家の提案する家作りだと思います。
リビングの多機能収納ということで壁面いっぱいに造付家具を設置しました。テレビや本、その他さまざまなものを収納するのに役立っています。実はこの家具工事、うちの事務所が引き受けました。キッチンも同様です。デザインから発注までを建築家が行うことで統一感のある高品質なものが提供出来ます。お客様にも喜んでいただきました。
軒が低かったので梁が天井に現れていますが、それも結構いい味となっています。
少し赴きの違う和室です。従前の民家に増築されて設けられていた和室をこの工事でも一新しました。造作材が白木で仕上がっていたので、ここではあえて古色とせず、生地の色をそのまま用いています。したがって障子の風合いもそれに準じました。
玄関に取り付けた照明器具の詳細です。長い行灯のようなデザインとなっています。表面には和紙を用いていますが、そこから漏れる光はとても優しい印象を与えてくれます。ライティング計画をご提案させていただいたときに是非採用したいというお声をいただきましたが、これも大光電機さんとのコラボで計画を進めました。ちなみに造付家具同様、照明器具に関してもうちの事務所が手配を行いました。
リビングに取り付けた照明器具の詳細です。球形のデザインです。直径は45cmだったと思いますが、やはり空間雰囲気に見合うものを適材適所、選定していきます。灯りっていいですね。
玄関の壁に取り付けたブラケット照明の詳細です。2灯を縦配置としました。いい雰囲気になりました。
障子から漏れる光の詳細です。やはり日本人の心にすっと馴染みます。優しくて落ち着きます。
いかがでしたか?WEB版OPEN HOUSEは。
実際に建物を見学するほうがより理解を深められるのですが、既に住まわれているお家ばかりなので、あえてこの方式とさせていただきました。でも、お時間をいただければクライアントの方にご見学をお願いすることも全く不可能ではありません。
また外観だけならばいつでもご案内させていただきます。
百聞は一見にしかず。実物をみて何かを感じ取ってもらえれば、それが一番いいことかもしれませんね。